ひとあじ違う「大人の塗り絵」

落語山吹丸illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

ええー、世の中では「大人の塗り絵」なんてのがえらく流行っているそうでございまして。

いい大人が塗り絵なんかするもんかいと思いますでしょ、あたくしもそう思っておりましたよ。ところがどうでしょう、本屋さんで手に取ってみるってえと、これがまた、すごいんですよ、絵が。まあびっくり仰天するほど細かくて凝った絵でしてね、こりゃあ確かに、大人のためのもんですよ!子供は学校だ遊びだ習い事だと忙しいですからね。こんなの塗ってるヒマなんか、ありゃしません、ははははは。

でもね、塗り絵ってのは楽しいものですよ。
あたくし、どうみても山吹丸でございましょう?それが、色をちょこちょこっと塗り替えるとほら、

落語菫丸illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

菫丸に!

菫丸
何言わせるのにゃ! 
山吹丸
私たち、色以外にも数え切れないほどの個性があるんですよ!ほら、全然違うじゃないですか。 
菫丸
色しか違わないように見えるのは絵が手抜きなせいにゃ! 

あ〜、落語ごっこしてただけなのに妄想猫たちに怒られました。
はいはい、素敵な塗り絵買ってあげるからそう興奮しないで。

というわけで、大人気の「大人の塗り絵」。以前から、いろんなのが出てるな〜と、本屋さんで見たり、手に取ったりはしていたのですが、買ってみました、初・大人の塗り絵!その名も

「ハルカナ遊園地」松沢タカコ(グラフィック社)

不思議な世界の不思議な遊園地。訪れるお客さんたちも、人間だけじゃなくて、どこか不思議な生き物たち。園内で使われるのは遊園地の「公用語」。見たことのない文字で書かれていますが、大丈夫、遊園地に一歩足を踏み入れれば、自然と意味がわかるのです。魅力的なアトラクションがいっぱい、たとえば「フルーツブランコ」に「回転木虫」「ホラーハウス竜宮城」

と、こんな世界観で描かれたとても楽しい塗り絵です。「ハルカナ遊園地」行ってみたくなりませんか?

Amazonなどでも発売中ですが
ハルカナ遊園地(Amazonで見る)

私は本屋さんで手に取るワクワク感が好きなので、書店へ出かけて行きましたところ、この本、写真で見た印象よりも大判でした。ハルカナ遊園地とオオムギちゃん

うちのホワイトタイガー、オオムギちゃんと比べてもほれこの通り!
……余計わかりにくいですね。

ページ数も多くて、じゃばら折りポスターもついていて、作者による遊園地案内(各エリア・アトラクションの紹介)など読むところもたくさんあって、ものすごくお得感があります。絵が好きな人、塗るのが好きな人だけでなく、不思議ファンタジー好き、妄想好きには超おすすめです。用途未定の1296円がお財布にある人は買いに行こう!

松沢タカコさんのホームページ「煙渦堂」では、本作「ハルカナ遊園地」の表紙・本文画像の入った紹介のほか、この本の原案となった昨年末の個展「サイハテ遊園地」出展作など松沢さんの魅力的なイラストレーションの数々を見ることができます。

さて、初めての「大人の塗り絵」本を買ってみて、改めて思ったことは、「塗りたいけど塗っちゃうともったいない」というジレンマのすごさ。予測はしていましたがこれは本当に悩みます。今のところ念写で塗っては念力で消して、何度も楽しんでいます。つまり妄想塗り絵です。これも楽しいです。

「塗る」というのには、絵を描くのとはまた違う、無心になれる楽しさがあると思います。それに癒されるという人も多いから、絵を描くのが好きな人にも、必ずしも自分で絵を描くのは好きでない、得意でない、という人の間にも、こんなに流行しているのかと。好きなものや好きな色に囲まれつつ無心に手を動かすのは確かにとても楽しいことです。全ページを自分の好きな色で塗ってオリジナル絵本に仕上げるのもいいし、この塗り絵は遊園地の背景やアトラクションのパーツ、遊園地で遊んでいるキャラクターなど小さなところまでいちいちかわいいので、気に入った部分を真似して描いたりするのも「無心」になって癒される楽しみ方ではないでしょうか。

実は著者の松沢タカコさんは友人です。
でも、最初にお会いした頃から絵がいいな〜と思っていたので、多分に私の好みは入っているものの、決して身内びいきで言うわけでなく、数ある塗り絵本の中でも手に取りたくなる、欲しくなる魅力に溢れた本だと思うのでおすすめいたします。白畠かおりさんのブックデザインも素敵です。

山吹丸
保存用に1冊と、塗る用が2冊は欲しいですね 

菫丸
ふたりぶんだから合計6冊買ってきてにゃ 

雨梟猫
ふたりとも、大人の塗り絵なんだから、「大人買い」は自分でね! 

山吹丸
お後がよろしいようで