いつから「女子」は「若い女のコ」みたいなことを意味する言葉になったというのだ
これで書きたいことはほぼおしまいである。
だって「女子」だ。
「男子一生の仕事」だの「男子の本懐」だのに使う、「男子」と対になる言葉だ。あれって「若い男のコ」って意味じゃないだろう。
ところが世間では自らを「女子」と称する中年女子を揶揄して「いつまで女子のつもりなんだ」などと言ったりするのである。あれは一体どういうわけなんだろう。
私の感じ方がおかしいのかと思い辞書を引いてみたが、やはり女子と男子とで意味の非対称はないようだ。「近頃、女子=若い女性 という意味で使われがちだが、そうではないよね?」と一応人(男子)にも聞いてみたが、「違うだろう。そういう人は女子トイレ・男子トイレに入るなと言いたいよね」との回答。やっぱりそうだよね。
トイレときたか。なぜ「女子」トイレなのかというのも不思議といえば不思議だ。
「女性トイレ」だの「男性トイレ」だのといってもいいはずだし言葉の意味としてはおかしくない。が、それだと幼い「女児」「男児」が含まれないイメージがある(これもあくまでもイメージではあるけれど)。
より汎用性の高い、すべての年齢層を網羅する言葉として「女子」や「男子」が選ばれたのではないだろうか。
それが、「女子」に何が起こってこんなことになってしまったのだか、私にはよくわからない。
さて、なぜ「今こそ」女子について問いたいかというと、非常にタイムリーな話題だと思うからで、なぜタイムリーかというと、このたび小池百合子氏が東京都知事に就任したところだからである。
女子と女子力そして本懐
もうだいぶ下火かとは思うが「女子力」というヘンテコな言葉がかつて猛威を振るった。
はやり言葉を、その雑な使われ方も含めて楽しむという心得は私にもある。「女子力、消滅〜ぅ!」と掛け声をかけながら、人が見ていない時に階段の手すりによじ登ったり風呂で泳いだりと、どうでもいいことに打ち興じたりするのもなかなかどうして乙なものだ。
しかし言葉を使うことをなりわいとする人が、そのなりわいにおいて雑な言葉を使っているとさすがに驚く。世界の頂点レベルを目指してしのぎを削っているスポーツ選手や科学者の女性をつかまえて「この人の女子力が実はすごい」とかなんとか、言ったりするやつだ。そりゃあ男子か女子かに自分を分類してその中でのアイデンティティーを確立しないと過酷な目にあいがちな世の中、優れた人のそうした処世術も知りたいものかもしれないが、ここはつまんない合コン会場か!?とびっくりするではないか。
雑だ。良いか悪いかではない。とにかく雑だ。
東京、それは雑な都市
小池百合子氏に話を戻すと、小池氏はかつて防衛大臣を辞任した際に「女子の本懐」という言葉を使った御仁だ。あの時は「小池さん、『女子の本懐』って言いたかったんだろうな」と思っただけだったが、それどころではなかったようで、のちに自著のタイトルにもしている。
小池氏はもと通訳・ニュースキャスター。いわば言葉をなりわいにしてきた人だ。実際のところは知らないが「女子」はともかく「女子力」という言葉をすすんで使うタイプではないという印象がある。だがそれは世間で使われている意味を知らないからではありえない。すでに「女子」=「若い女性」というイメージが流布していた時代に敢えて旧来の字義通りの意味で「女子」と言い、さらに「本懐」なんて古い言葉をくっつけたのだ。
彼女を賞賛する場合でも、批判する場合の一フレーズとしてでも、「女子力」などという言葉を使ったらそれこそ術中にはまるぞ、という予感がする。えらいことになるぞ、ほんとに(知らないけど)。
都政が今後良くなるか悪くなるかなどまだ推測のしようもない。前任とその前の時代は短かすぎたのでさておくとして、非常に長かった石原都政時代と何がどう変わるのかも、正直よくわからない。「厚化粧」発言などで対決を見せはしたが、両者には共通点も多くかなり似て見える。
選挙戦を「人」中心にウォッチして各候補や歴代都知事の相対化を試みた限りにおいては、「雑さ」を攻撃対象にもすれば、肥やしにも武器にも変える能力に最も長けているのが現都知事と思われる。あまり意識してこなかったが、リーダーに必要な資質なのかもしれない。とにかくみんな雑だから。
東京、それは雑な都市である。
厚化粧は雑じゃないほうがいい
これは、小池百合子氏の厚化粧が雑だと暗に言いたいわけではない。だいたい小池氏はそんなに厚化粧じゃないだろう。今後厚化粧派にシフトするならばもちろん固唾を飲んで見守る所存である。
そして「女子力」に代表される、次々湧いて出る雑な言葉の使われ方の推移も、新しい都政のもとで今後も観察したいところだ。
ちなみに厚化粧は嫌いじゃない。浅丘ルリ子ラブである。若い時じゃなくて、今の。「チェブラーシカ」に出てくるワニの「ゲーナ」にも似ていて超キュート。友達に言ったら「あんた浅丘ルリ子をバカにしてないか?」と言われたが、何を言うか、そんなわけないだろうが!ファンですよ私は。雑じゃないですよルリ子様の厚化粧は。攻めの厚化粧である。厚化粧厚化粧言うなって?言わせてよ、ファンなんだから!
ドラマ「すいか」での名台詞「だって私厚化粧大好きだもん」にも感動したものだ。(大学教授・崎谷夏子役。脚本は木皿泉)
ちょっと真似してみたいが化粧の技術が低い上、肌も弱いので、冬の厚着あたりでお茶を濁したいところ。だがもし、私が突然厚化粧で現れたら、ユリ子じゃなくてルリ子リスペクトなのだとは一応言っておきたい。
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